収益と利益の最大化を支援する
プロフィット・コーチの小林 剛です!
『結果』を出すなら、『(財務)知識』と『意識』で、PDCA
前回は、会社が生み出した「付加価値(粗利益)」を基準に、人件費総額や賞与原資を考えるラッカープランについてお話ししました。
ラッカープランを上手に活用すれば、会社と社員が同じ方向を向き、付加価値を増やすために協力できるようになります。
しかし、私はラッカープランの計算式を、そのまま機械的に賞与へ連動させることには慎重であるべきだと考えています。
制度には、メリットがあります。
同時に、デメリットもあります。
今日は、ラッカープランを導入するメリットと、経営者が知っておくべき落とし穴についてお話ししたいと思います。
売上ではなく「会社に残した価値」を評価できる

ラッカープランの大きな特徴は、売上高だけでなく、会社が生み出した付加価値(粗利益)を評価することです。
売上高を増やすことは重要です。
しかし、売上を増やすために大幅な値引きをしたり、材料費や外注費が大きく増えたりすれば、会社に利益は残りません。
ラッカープランでは、
✔値引きを減らす。
✔材料の無駄をなくす。
✔外注費を適正化する。
✔不良品を減らす。
✔手直しをなくす。
✔生産性を向上させる。
こうした行動も、付加価値(粗利益)の増加として評価されます。
営業部門だけが、会社の利益を作っているわけではありません。
製造、施工、管理、事務など、すべての部門の努力が、会社の付加価値(粗利益)につながっています。
■会社と社員の方向性を一致させる
社員にとって、給与や賞与は生活に直結する大切なものです。
一方、会社にとって人件費は、最も大きな固定費の一つです。
この二つを対立させてしまうと、
「社員は、もっと給料が欲しい。」
「会社は、人件費を抑えたい。」
という関係になってしまいます。
しかし、本来目指すべきなのは、人件費を減らすことではありません。
社員一人ひとりが生み出す付加価値(粗利益)を増やし、会社が支払える人件費総額を大きくすることです。
つまり、
『人件費の削減ではなく、付加価値(粗利益)の増加を目指す』
ということです。
ラッカープランは、
みんなで付加価値(粗利益)を増やし、その成果をみんなで分かち合う
という、会社と社員の共通目標を作ります。
■賞与の決定基準が明確になる
中小企業では、賞与の金額を社長の判断で決めているケースが少なくありません。
社長としては、
会社の業績。
資金繰り。
社員の頑張り。
今後の設備投資。
納税や借入金返済。
さまざまな事情を総合的に考えて、賞与を決めています。
しかし、社員から見ると、その判断過程は分かりません。
「なぜ、今年の賞与はこの金額なのか。」
「去年より頑張ったのに、なぜ賞与が減ったのか。」
という疑問が生まれます。
ラッカープランを取り入れることで、
*付加価値(粗利益)
*労働分配率
*人件費総額
という数字を使い、賞与原資を説明しやすくなります。
■社員の財務教育につながる
ラッカープランを本当に機能させるためには、社員に会社の数字を伝える必要があります。
社員に理解してもらいたい数字は、次のようなものです。
✔売上と利益は違う。
✔粗利益・付加価値とは何か。
✔給与以外にも、会社負担の社会保険料がある。
✔無駄や手直しは、利益を減らす。
✔賞与は、会社に残ったお金から支払われる。
社員が会社の数字を理解すると、日々の仕事に対する見方が変わります。
材料を無駄にしない。
時間を無駄にしない。
値引きを簡単に受け入れない。
不良や手直しを減らす。
お客様に、より高い価値を提供する。
ラッカープランは、賞与を決める制度であると同時に、
『社員を経営者目線に育てる制度』
にもなります。
最大の問題は「付加価値(粗利益)の定義」

ここからは、導入時に注意すべき問題について考えてみます。
ラッカープランで最も重要なのは、
『何を「付加価値(粗利益)」とするのか?』
ということです。
会社によって、
*売上総利益を使う。
*売上高から材料費・仕入・外注費を控除する。
*さらに運賃や販売手数料などを控除する。
というように、付加価値(粗利益)の計算方法が異なります。
途中で計算方法を変えると、社員から、
「賞与を減らすために、会社が計算方法を変えたのではないか。」
と思われる可能性があります。
どの科目を控除し、どの数字を付加価値(粗利益)とするのか。
導入前に明確にし、途中で都合よく変えないことが重要です。
■労働分配率を業種横断で比べてはいけない
ラッカープランの説明では、
「労働分配率40%以下が優良企業」
などと紹介される場合があります。
しかし、この数字をすべての会社に当てはめるのは危険です。
製造業。
建設業。
卸売業。
介護事業。
コンサルティング業。
それぞれ、原価構造や必要な人員がまったく違います。
特に、介護事業のような労働集約型事業では、労働分配率が高くなるのは当然です。
他社の数字を、そのまま自社へ当てはめてはいけません。
自社に適した労働分配率は、
✔過去3~5期の実績
✔今後の人員計画
✔採用・賃上げ方針
✔会社が確保すべき利益
などを踏まえて決める必要があります。
■会社全体の成果だけでは、不公平感が生まれる
ラッカープランは、基本的に会社全体で生み出した付加価値(粗利益)を社員へ配分する仕組みです。
しかし、全員へ一律に配分すると、
*非常に大きく貢献した社員
*標準的に働いた社員
*十分な貢献をしなかった社員
の違いが反映されません。
頑張った社員ほど、不公平を感じる可能性があります。
したがって、
『会社全体の賞与原資を決める仕組み』
と、
『一人ひとりの賞与額を決める評価制度』
は、分けて考える必要があります。
■短期的な経費削減に偏ってはいけない
付加価値(粗利益)や賞与原資を増やそうとして、必要な経費まで削減する危険があります。
例えば、
✔採用を控える。
✔社員教育をやめる。
✔修繕を先送りする。
✔設備投資を抑える。
✔広告宣伝をやめる。
短期的には、利益が増えるかもしれません。
しかし、会社の将来は弱くなります。
採用も教育も設備投資も、単なる経費ではありません。
会社の未来を作るための投資です。
「無駄な経費」と「未来に必要な投資」を区別しなければなりません。
利益があっても、現金があるとは限らない

付加価値(粗利益)が増え、計算上の賞与原資が出たとしても、その金額をすべて支給できるとは限りません。
売掛金が回収できていない。
在庫が増えている。
借入金返済が大きい。
納税を控えている。
設備投資を予定している。
このような場合、利益が出ていても、会社には十分な現金がないかもしれません。
利益と現金は違います。
ラッカープランの計算結果だけで、賞与を決定してはいけません。
まとめ:ラッカープランは「自動支給制度」ではない
ラッカープランは、非常に優れた考え方です。
しかし、計算式へ数字を入れ、出てきた金額を自動的に全額支給する制度ではありません。
あくまでも、
『会社が生み出した付加価値から見て、どの程度まで社員へ還元できるのか?』
を判断するための物差しです。
付加価値(粗利益)。
利益。
現預金。
借入金返済。
納税。
設備投資。
将来の運転資金。
これらを総合的に見て、最終的な賞与額を決定する必要があります。
次回は、
「ラッカープランを安全に導入する7つのポイント」
というテーマで、会社の利益と資金を守りながら、社員へ成果を還元する方法についてお話ししたいと思います。
