収益と利益の最大化を支援する
プロフィット・コーチの小林 剛です!
『結果』を出すなら、『(財務)知識』と『意識』で、PDCA
これまで2回にわたり、会社が生み出した付加価値(粗利益)を基準に、人件費総額や賞与原資を考えるラッカープランについてお話ししてきました。
上手に導入すれば、社員のモチベーションを高め、会社の数字への理解を深め、会社全体で付加価値(粗利益)を増やすことにつながります。
一方、制度設計を誤れば、社員の不信感を招き、会社の資金繰りを悪化させる危険もあります。
大切なのは、
『付加価値(粗利益)を増やした成果を社員へ還元しながら、会社の利益と資金をきちんと守ること』
です。
今日は、ラッカープランを安全に導入するための7つのポイントについてお話ししたいと思います。
ラッカープランを安全に導入する7つのポイント

1.最初から基本給に連動させない
ラッカープランは、基本給よりも業績連動賞与に活用するのが適しています。
基本給は、会社の業績が悪化したからといって、簡単に減額できるものではありません。
付加価値の変動を、そのまま基本給に反映すると、会社の固定費が増えます。
そして、業績が悪化したときに、会社の経営を圧迫します。
したがって、最初から基本給へ連動させるのではなく、
従来の基本給を維持し、賞与原資の一部から導入する
という方法が安全です。
2.付加価値と人件費の範囲を明確にする
ラッカープランを導入する前に、
「何を付加価値とするのか。」
「どこまでを人件費に含めるのか。」
を明確にします。
人件費には、次のような項目があります。
✔給与
✔賞与
✔役員報酬
✔法定福利費
✔福利厚生費
✔退職金
✔派遣社員費
✔採用費
✔教育研修費
これらをすべて含めるのか。
一部を除外するのか。
その取扱いによって、計算結果は変わります。
■会社負担の社会保険料に注意する
特に注意したいのが、賞与に対する会社負担の社会保険料です。
賞与予算が1,000万円だからといって、社員へ額面1,000万円を支給すると、会社負担の社会保険料が別途発生します。
会社の負担総額と、社員へ支給する額面金額は同じではありません。
賞与原資を決めるときは、
会社が実際に負担する総額
で考える必要があります。
3.過去3~5期の数字でシミュレーションする
ラッカープランを、いきなり本番導入してはいけません。
まず、過去3~5期の決算書を使って、次の数字を比較します。
✔付加価値
✔人件費総額
✔労働分配率
✔営業利益
✔経常利益
✔実際に支給した賞与
✔ラッカープランで計算した賞与原資
過去の業績に当てはめることで、
「この制度を使っていたら、賞与はいくらになっていたのか。」
「業績が悪い年に、賞与が極端に減らないか。」
「会社に必要な利益が残るか。」
を確認できます。
他社の労働分配率を、そのまま自社へ当てはめてはいけません。
自社の過去の数字から、自社に適した基準を見つけることが重要です。
4.会社全体の原資と個人配分を分ける
賞与は、次の二段階で決めることをおすすめします。
■第1段階
会社全体の業績から、賞与原資の総額を決める。
■第2段階
個人評価、役割、勤務実績などから、一人ひとりへの配分額を決める。
例えば、個人配分を次のように設計します。
*会社・施設・部署の業績:50%
*個人評価・役割・貢献:30%
*勤務実績・在籍期間:20%
この割合は一例です。
大切なのは、
「会社全体の成果」
と、
「一人ひとりの貢献」
を分けて評価することです。
会社全体の業績だけで決めると、頑張った社員に不公平感が生まれます。
個人評価だけで決めると、社員が会社全体の業績へ関心を持たなくなります。
二つを組み合わせることで、制度への納得感を高められます。
5.賞与原資に「安全弁」を設ける
ラッカープランで計算された賞与原資を、すべて支給する必要はありません。
例えば、
✔計算上の賞与原資の70%までを支給する。
✔営業利益の一定割合を上限とする。
✔経常利益が一定額を下回る場合は減額する。
✔必要な現預金残高を下回る場合は支給額を調整する。
こうした「安全弁」を設けます。
■賞与より先に確保すべきもの
賞与を支給する前に、会社は次の資金を確保しなければなりません。
*通常の給与と社会保険料
*税金
*借入金の返済
*必要な設備投資
*将来の運転資金
*会社の存続に必要な内部留保
社員への還元は、もちろん大切です。
しかし、賞与を支給した結果、会社の資金繰りが苦しくなっては本末転倒です。
会社が存続し、成長し続けることが、社員の雇用と生活を守ることにもつながります。
6.1年間は「試行計算」にとどめる
正式導入の前に、1年間程度の試行期間を設けることをおすすめします。
試行期間中は、実際の賞与へ完全には連動させません。
毎月、
現在の業績であれば、賞与原資はこの程度になる
という数字を確認します。
月次で確認することで、
✔季節変動がどの程度あるか。
✔在庫や仕掛品の影響はないか。
✔一時的な売上や費用に左右されないか。
✔社員に説明できる数字になっているか。
を検証できます。
制度を始めてから計算方法を何度も変更すると、社員の信頼を失います。
試行期間中に問題点を洗い出し、制度を整えてから正式導入する方が安全です。
7.賞与規程・就業規則と整合させる
現在の賞与制度より不利になる可能性がある変更は、労働条件の不利益変更になる場合があります。
また、常時10人以上の従業員を使用する事業場では、賞与規程や就業規則の変更に伴い、従業員代表からの意見聴取や労働基準監督署への届出が必要になる場合があります。
正式導入前には、社会保険労務士などの専門家へ確認し、
✔賞与規程
✔就業規則
✔従業員への説明内容
✔制度変更時の手続き
を整える必要があります。
制度の中身が正しくても、導入手続きや社員への説明が不十分であれば、社員の納得は得られません。
■賞与を決める正しい順番
ラッカープランを導入する場合でも、賞与は次の順番で考えます。
①正確な付加価値を確認する。
②通常給与・法定福利費などを確認する。
③納税、借入返済、設備投資、運転資金を確保する。
④会社の存続・成長に必要な利益と現預金を残す。
⑤残った範囲で業績連動賞与を決定する。
ラッカープランの計算結果は、賞与を考える出発点です。
最終的な支給額は、
*利益
*現預金
*資金繰り
*借入金返済
*将来投資
を総合的に考えて決定します。
まとめ:ラッカープランを「人育ての仕組み」にする
ラッカープランの本質は、人件費を削減することではありません。
社員とともに付加価値を増やし、会社に必要な利益と資金を確保したうえで、その成果を公正に分かち合うことです。
そして、制度を導入するだけでは、社員の行動は変わりません。
毎月の数字を、社員に分かる言葉で伝える必要があります。
「なぜ、付加価値が増えたのか。」
「なぜ、付加価値が減ったのか。」
「どの行動が、会社の成果につながったのか。」
これを社員と一緒に振り返ることが重要です。
数字は、社員を責めるためのものではありません。
会社の現在地を知り、次の行動を考えるためのものです。
職場は、単に働いて給料をもらう場所ではありません。
『職場は、人育ての場所』です。
社員が会社の数字を理解する。
自分で考える。
自分で行動する。
そして、仕事を通じて成長する。
ラッカープランを、単なる賞与計算の制度で終わらせてはいけません。
会社と社員がともに成長し、
「愛と幸せと感謝と利益」を最大化する仕組み
として活用すること。
それが、ラッカープランを導入する本当の価値なのです。
