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プロフィット・コーチの小林 剛です!
『結果』を出すなら、『(財務)知識』と『意識』で、PDCA
こんにちは。
今回は、事業承継・相続コーチングの現場でのお客様と税理士を交えての、役員退職金規程の有無について、議論した内容を記しました。
「代表取締役会長に退職金2億円を支払いたい。でも役員退職金規程がない…」
このような相談は中小企業の事業承継の現場でよく聞かれます。
今回は、『役員退職金規程がない場合でも、退職金は合法的に支払えるのか?税務的に大丈夫なのか?』
という疑問について、判例と実務をもとに整理していきます。
結論:規程がなくても、退職金支給は可能!

役員退職金については、必ずしも「役員退職金規程」が必要というわけではありません。
株主総会で適正に決議され、支給額が「合理的」な範囲であれば、規程がなくても支給は合法であり、税務上も損金算入が認められる可能性があります。
判例に見る「規程がない退職金」でも認められたケース

1.【退職金は報酬の一種】規程なしでも支給できる法的根拠
役員退職金は、会社法上「報酬等」に含まれ、株主総会の承認(あるいは委任)により支給可能です(会社法361条)。
つまり、退職金規程がなくても、株主総会で支給決議がなされていれば、それだけで法的には有効という立場です。
2.【過去の支給実績】が合理性を補強する
過去に役員退職金が支給されていた実績や、「報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率」といった基準があれば、税務署も“合理的な範囲”として認めやすいとされています。
規程がなくても、「過去の支給水準」「業績との整合性」などが明確であれば、否認リスクを抑えられます。
3.【規程なしでも損害賠償が認められた裁判例】
近年の注目判例として、2023年11月17日の広島高裁判決では、退職金支給を否決された元役員が、不法行為に基づく損害賠償請求を行い、一部認容された事例があります。
この裁判では、
- 退職金支給の慣行があった
- 株主総会での否決の理由が不合理だった
という点が評価され、「支給されて当然と期待される状況(期待権)」が保護されました。
規程がないときの注意点

規程がなくても支給は可能ですが、以下の点に留意してください。
チェック項目 | 内 容 |
株主総会決議 | 金額や一任範囲を明記する(議事録必須) |
合理的金額 | 最終報酬月額 × 在任年数 × 妥当な功績倍率(2.0〜3.0倍) |
慣行の明示 | 過去の支給実績や業績との整合性を資料化 |
記録の保存 | 議事録、計算根拠、類似企業との比較資料など |
◆ 実務対策:「規程なし」でも否認リスクを下げるには?
- 株主総会決議を確実に行う(議事録残す)
- 支給額の算定根拠を明確にする
- 過去の支給履歴や業績資料を整えておく
- 将来のために簡易な退職金基準表を用意するのも有効
まとめ:規程がなければ“ダメ”ではない
✔ 役員退職金規程がなくても、株主総会の決議+合理性があれば合法。
✔ ただし高額な場合や親族への支給は、税務署が厳しくチェック。
✔ 紛争や否認リスクを避けるなら、簡素な規程でも作成がおすすめ。
以上、経営者の皆様が安心して退職金設計を進められるよう、実務と法的観点から記しました。
お気軽にご相談ください。
※記事内容は一般的情報をもとに構成されており、個別の税務判断は専門家にご相談ください。