
収益と利益の最大化を支援する
プロフィット・コーチの小林 剛です!
『結果』を出すなら、『(財務)知識』と『意識』で、PDCA
「ありがたいことに売上は伸びている。だけど、なぜか資金繰りは楽にならない…」
そんな悩みを抱える中小企業経営者は、実は少なくありません。
むしろ、売上が伸びているからこそ、資金繰りに悩むケースは多く、黒字倒産という最悪の結末を迎える企業もあります。
そんな「売上が伸びているのにお金が足りない」現象の仕組みと根本原因を解説し、経営者としての具体的な対策と視点をご紹介します。
なぜ「売上が伸びているのに、お金がない」のか?

一見矛盾しているようですが、これは会計と実際の資金の流れ(キャッシュフロー)の構造が異なることに起因します。
▶ よくある経営者の誤解
- 「売上が伸びている=儲かっているはず」
- 「利益が出ているのだから、現金も増えているはず」
この“会計上の数字”だけを見た楽観的な判断が、資金ショートの落とし穴です。
◆ 具体的な7つの原因◆
原 因 | 詳 細 |
➊売掛金の増加 | 売上計上はしたが、実際の入金は1〜2ヶ月先。売上が伸びるほど未回収金が膨らむ。 |
❷在庫の増加 | 売れる前の商品・原材料の仕入れに先行して現金が出ていく。売上増加=在庫も増える。 |
❸仕入・外注費の前払い | 商品・サービス提供前に経費が発生。仕入や外注が増えるほど資金が先出しに。 |
➍設備投資や借入返済の増加 | 売上拡大を狙って設備や人材に投資すると、一時的に資金が流出。返済負担も増える。 |
❺粗利率の低下 | 売上は増えても、薄利な取引が増えると現金が残らない。量は増えても質(利益)は下がる。 |
❻販売促進費・固定費の先行増加 | 広告、人員増強、事務所移転など、売上に先んじてコストが先行するケース。 |
❼税金・社会保険料の支払いタイミング | 利益に応じて後から発生する納税で、一気に現金が出ていく(特に中間納税など)。 |
成長が原因で潰れる!? 「黒字倒産」の正体

企業が倒産する理由は、「赤字」ではなく「現金が尽きること」です。
売上が伸びているときこそ、
- 設備投資
- 採用
- 生産拡大
- 販促活動
といった先行支出が増え、キャッシュアウトが先行しがちになります。
にもかかわらず、現金回収は遅れてやってくるため、資金繰りが詰まりやすい。
これはまさに、『成長の罠』とも呼べる現象です。
キャッシュを守る経営へ転換せよ!!

ここからは、「売上至上主義」から「キャッシュフロー主義」への発想転換が必要です。
対 策 | ポイント |
資金繰り表の作成・更新 | 日・週・月単位で資金の出入りを見える化。将来の資金ショートを早期に把握。 |
売掛金の回収条件を見直す | サイト短縮、前受金の導入、分割払いなどの交渉。 |
支払条件を延ばす交渉 | 支払サイトを延ばすことで資金繰りに余裕をもたせる。 |
在庫適正化 | 過剰仕入れの抑制、在庫回転率を意識した調達へ。 |
粗利率重視の営業 | 売上よりも「いくら利益が残るか」を軸に判断。 |
固定費の段階的コントロール | 拡大局面での人件費・家賃などを段階的に増やす。 |
運転資金融資の活用 | 売上成長期の資金不足は融資で乗り切る。事前準備が重要。 |
◆ 経常運転資金の考え方
【式】経常運転資金 =(受取手形+ 売掛金 + 在庫 )−(支払手形+ 買掛金)
この経常運転資金が増えるほど、『事業活動に必要な、常に動いている現金』が増え、資金繰りが圧迫されます。
売上が増えるということは、この運転資金も比例して増えるという現実を忘れてはいけません。
◆ 社長が見るべき「3つの数字」
経営者が必ず毎月チェックしておくべき重要な指標は次の3つです。
* 経常運転資金の水準:売上の裏で、いくら現金が拘束されているか?ここにテキスト
*現預金残高:今、使えるお金はいくらあるか?
*粗利益(売上総利益):稼ぐ力があるか?(利益の源泉)
まとめ:「利益」ではなく「キャッシュ」を見よう!!
売上が伸びる=成長は喜ばしいことです。
しかし、成長の裏には「見えないお金の出入り」があります。
- 利益があっても倒産する会社
- 売上があってもお金がない会社
これらの根本的な原因は、すべてキャッシュフローの視点不足にあります。
だからこそ、これからの社長には「会計」だけでなく、「資金の流れ」も読める経営力が求められるのです。