収益と利益の最大化を支援する
プロフィット・コーチの小林 剛です!
『結果』を出すなら、『(財務)知識』と『意識』で、PDCA
プロフィット・コーチをしていると、驚くほど多くの企業でABC分析が行われていません。
売上・利益の8割を生み出す上位2割の顧客や商品を見極める
経営効率化の王道ツールであるにもかかわらず、現場ではほとんど使われていないのが実情です。
なぜ、多くの企業はABC分析を行わないのか?
そこには、単なる「知らない」「面倒だから」では片づけられない、深い経営心理と組織文化の問題が隠れています。
「数字で切る」ことへの心理的抵抗

ABC分析を行うと、「A」「B」「C」が明確になります。
つまり、“やるべきもの”と“やめるべきもの”が可視化されるということです。
しかし、ここに多くの経営者が心理的なブレーキを感じます。
- 「昔からの取引先をC顧客に分類するなんてできない」
- 「社員が一生懸命作っている商品を“C商品”と呼べない」
- 「人の努力を数字で切るのは冷たい気がする」
ABC分析は合理性のツールですが、経営現場では“情”の要素が強く、数字が感情とぶつかる場面が多いのです。
結果として、「本当はやるべき」と分かっていながら、手をつけないままになってしまいます。
「売上至上主義」から抜け出せない

いまだに多くの企業では、
「売上を伸ばすこと」=「会社が良くなること」
と考えられています。
しかし実際には、売上が伸びても利益が減るケースは少なくありません。
ABC分析をすると、「売上は大きいが利益率の低い顧客・商品」が見えてきます。
それは、これまでの営業方針や評価制度を根底から問い直すことを意味します。
つまり、「営業の常識」を否定する結果になる可能性があるのです。
その痛みを避けたいがために、あえて分析を行わない。
これも現場で非常によく見られる構造です。
「データが整っていない」という現実的な壁

ABC分析を行うには、
- 商品別売上
- 顧客別粗利益
- 在庫回転率
などのデータが必要です。
しかし中小企業では、販売管理・会計・在庫のデータがバラバラに存在しているケースが多く、
「どの顧客がどれだけ儲かっているか」をすぐには出せません。
現場の声はこうです。
「売上は出せるけど、粗利は見えない」
「顧客別原価が取れない」
「データが散らばっていて分析できない」
つまり、“分析したくてもできない”状態。
Excelや会計システムを活用できていないことも大きな要因です。
「分析の先」が見えていない

ABC分析をしても、その先に「どう動くか」の方針がなければ意味がありません。
多くの企業が次の段階で止まります。
- 「A顧客がわかったけど、どう優遇すればいい?」
- 「C商品をやめると売上が下がる。代替策は?」
つまり、分析の先に“経営戦略”が設計されていないのです。
ABC分析は「地図」にすぎません。
それをもとに「どの道を進むか」を描けなければ、絵に描いた餅になります。
「全体最適」より「現場主義」が強すぎる

ABC分析は「全社最適」の発想です。
しかし、多くの企業では「部分最適」文化が根強く残っています。
- 営業は「売上を上げろ」
- 製造は「品質を守れ」
- 経理は「コストを下げろ」
各部門が自分の目標だけを追う中で、会社全体の粗利益構造を俯瞰する文化が育ちにくいのです。
結果、経営者自身も「現場支援」や「トラブル対応」に忙殺され、“数字で会社全体を俯瞰する”時間が取れないまま日々が過ぎていきます。
「数字は結果」という思い込み

多くの経営者が、数字を「過去の結果」として見ています。
しかし、ABC分析の真の価値は未来の意思決定ツールにあります。
「どの顧客を伸ばすか」
「どの商品に投資するか」
「どの業務を削減するか」
これらはすべて未来をデザインする問いです。
数字を“過去の報告書”から“未来の羅針盤”に変える発想がなければ、ABC分析は「面白い話」で終わってしまいます。
「やめる勇気」が経営にない

ABC分析は「何をやめるか」を突きつけるツールです。
しかし、多くの経営者は次のように考え、踏み切れません。
- 「C顧客を切ると社員が暇になるのでは」
- 「C商品をやめると売上が下がるのでは」
- 「取引先との関係が悪くなるのでは」
結果、「全部を残す」=「全部が中途半端」という構造に陥ります。
実はこれこそが、経営を疲弊させる最大の原因なのです。
まとめ:「見たくない現実を直視する勇気」
ABC分析は、数字を並べる作業ではありません。
「何に経営資源を集中し、何をやめるか」を決める
経営者の覚悟を問うツールです。
やらない理由の多くは、「できない」ではなく、“見たくない現実”が見えるから。
しかし、現実を見て、選択し、集中できる企業ほど、確実に利益構造を強化し、潰れない会社をつくっています。
「あなたの会社では、何がAで、何がCですか?」
その問いに数字で答えられる経営こそ、「勘と経験」から「戦略と確信」へと進化した経営です。
