収益と利益の最大化を支援する
プロフィット・コーチの小林 剛です!
『結果』を出すなら、『(財務)知識』と『意識』で、PDCA
「すべてのお客様を大切に」「すべての商品を売る」。
そう思うのは自然なことですが、現実の経営では「限られた時間・人・お金」をすべてに均等に使うわけにはいきません。
会社を強くするには、「どこに集中するか」を決めることが不可欠です。
その判断を数字で裏づけるのが、今回紹介するABC分析です。
この分析の基礎には、有名な「パレートの法則(80:20の法則)」があります。
パレートの法則とは?

パレートの法則とは、
「全体の成果の80%は、全体の20%の要素から生まれる」
という経験則です。
たとえば、
- 売上の80%は上位20%の顧客から生まれる
- 利益の80%は上位20%の商品が生み出している
- クレームの80%は20%の原因から発生している
というように、成果の分布が偏っている現象を説明する法則です。
経営においては、この法則を“見える化”して経営資源を集中することが、
高収益体質をつくる第一歩になります。
ABC分析とは?

ABC分析とは、対象(商品・顧客・在庫など)を重要度・貢献度の大きさによってA・B・Cの3ランクに分類し、
重点的に管理するための手法です。
| 区分 | 対象の割合 | 貢献度の目安 | 管理方針 |
| A | 約20% | 売上・利益の約80% | 最重点管理・経営資源集中 |
| B | 約30% | 売上・利益の約15% | 改善・効率化 |
| C | 約50% | 売上・利益の約5% | 整理・削減対象 |
つまり、「全部を頑張る」のではなく、
“少数の重要な部分”にエネルギーを集中するための意思決定ツールなのです。
◆ABC分析の主な活用領域◆
① 商品戦略
- A商品:売上・利益の柱。安定供給・ブランド強化を重視。
- B商品:成長余地あり。販促強化や改善対象。
- C商品:売上・利益貢献が低い。廃止・統合・在庫削減を検討。
✅ 重点商品の見極めと販促資源の集中が、利益率アップの鍵です。
② 顧客戦略
- A顧客:利益上位。関係維持・専任担当制で徹底フォロー。
- B顧客:成長期待。提案活動を強化。
- C顧客:採算割れ・値引依存。価格見直しや対応簡素化。
✅ 売上ではなく「粗利益」でランク付けするのがポイントです。
「多く買ってくれる顧客」ではなく「利益を残す顧客」に注目しましょう。
③ 在庫・仕入れ戦略
- A品目:高額・高回転。厳格管理・欠品防止。
- B品目:中額・中回転。適正在庫維持。
- C品目:低額・低回転。発注頻度削減・受注生産化。
✅ 「在庫の80%は20%の商品で構成されている」ケースも多く、
資金繰り改善の観点からも極めて有効です。
④ 業務・人材戦略
- A業務:経営成果に直結。優秀人材を集中。
- B業務:標準化・効率化を推進。
- C業務:外注・自動化・削減対象。
✅ “忙しいけど儲からない”業務をCに分類し、戦略的に削減する。
これが「働き方改革=経営改革」の本質です。
ABC分析の実務ステップ

◆ABC分析の実務ステップ◆
| ステップ | 内容 |
| ① データ収集 | 商品別・顧客別などの売上・粗利益データを抽出 |
| ② 並べ替え | 金額の大きい順に並べ替える |
| ③ 累積構成比を算出 | 全体に対する各項目の比率を計算 |
| ④ A・B・Cに分類 | 累積80%以内:A/80〜95%:B/95〜100%:C |
| ⑤ 戦略立案 | A=集中、B=改善、C=削減の方針を策定 |
✅ Excelで自動分類できるテンプレートを活用すると効果的です。
◆パレート思考が変える経営の見方◆
ABC分析は単なる分類ではなく、
「パレート思考による経営資源の再設計」を意味します。
| Before | After(パレート思考導入後) |
| すべての顧客・商品を平等に扱う | 成果の大きい20%に集中する |
| 売上重視の営業 | 粗利益・キャッシュ重視の営業 |
| 全社員が忙しい | 重要業務に集中し生産性を高める |
| コスト削減一辺倒 | 「選択と集中」で利益最大化へ |
◆経営戦略上の効果◆
✅ 意思決定の明確化:「やる」「やめる」が数字で見える
✅ 利益率の向上:A対象への集中で粗利益が増える
✅ 資金効率の改善:在庫・仕入れの最適化でキャッシュ改善
✅ 顧客満足の向上:重点顧客に深く寄り添う
✅ 社員の生産性向上:やるべき仕事が明確になる
まとめ:やらないことを決める勇気
ABC分析の本質は、「やることを決める」以上に「やらないことを決める」ことです。
パレートの法則を意識すれば、成果の大部分は一部の重要要素から生まれていることがわかります。
経営とは、「あれもこれも」ではなく、「これだけ」に集中する勇気です。
数字をもとに経営資源を最適配分する—それがABC分析経営の真髄です。
「あなたの会社のA商品・A顧客・A業務は、どれですか?」
その問いに明確に答えられる経営こそ、利益を生む経営です。
