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プロフィット・コーチの小林 剛です!
『結果』を出すなら、『(財務)知識』と『意識』で、PDCA
「運転資金が足りないので借入をしたい」
これは、多くの経営者が銀行に伝える言葉です。
売上が伸びれば売掛金は増え、在庫を持てば現金は減る。
事業を続ける以上、運転資金が必要になるのは当然です。
しかしここに、経営者と銀行の間で大きな認識の違いがあります。
経営者は、「運転資金は借りて、いずれ返すもの」と考えます。
一方、銀行が見ているのは、その運転資金は、本来“返すべきお金なのか”という点です。
この認識のズレに気づかないまま借入を続けると、黒字であっても資金繰りは徐々に苦しくなっていきます。
銀行が運転資金構造を見る最大の理由は、ただ一つ。
経常運転資金が、どの形で調達されているか。
ここを間違えた瞬間、会社の資金繰りは静かに、しかし確実に歪み始めます。
経常運転資金は「会社に張り付く資金」である

経常運転資金とは、
- 売掛金
- 棚卸資産
- 買掛金
の差額として、事業に常時張り付く資金です。
売上がある限り、
- 売掛金はゼロにならず
- 在庫も一定量必要になり
この資金は、事業を続ける限り消えません。
つまり経常運転資金とは、
「一時的に必要な資金」ではなく、「事業継続のための土台資金」なのです。
■本来、返済を前提としない資金
ここが最大のポイントです。
経常運転資金は、
- 借りて
- 返して
- また借りる
という性格の資金ではありません。
本来は、
- 当座貸越
- 短期継続融資
などで確保し、回収と支払の循環の中で“回し続ける資金”として保有するものです。
極端に言えば、「経常運転資金を返済するのは、会社をたたむとき」という性格を持っています。
銀行も、この前提で企業を見ています。
それでも多くの会社が証書貸付で借りてしまう理由

現場では、こういう流れが非常に多く見られます。
- 売上が伸びる
- 売掛金と在庫が増える
- 資金が足りなくなる
- 「とりあえず運転資金」として借りる
このとき、財務基盤が弱い会社では、
- 当座貸越が出ない
- 短期継続融資の枠が設定できない
結果として、「やむなく証書貸付で運転資金を借りる」という判断になります。
この時点では、経営者も銀行も、「とりあえず乗り切る」という判断をします。
しかし、問題はここから始まります。
■「返さなくてよい資金」を返す構造にしてしまう
証書貸付には、明確な特徴があります。
- 毎月必ず返済がある
- 元本が確実に減っていく
- 返済期限が決まっている
これは、設備資金や赤字補填には適しています。
しかし経常運転資金に当てはめると、「返済しても、資金需要は減らない」という矛盾が生まれます。
返済しても、
- 売掛金はなくならず
- 在庫も必要なまま
なのです。
ここで資金繰りは、構造的に詰まり始めます。
黒字なのに、なぜ資金が残らないのか?

この構造の会社では、毎年同じことが起きます。
- 利益は出る
- しかし返済に消える
- 経常運転資金は減らない
結果として、「利益を出しても、資金繰りが楽にならない」という状態が続きます。
社長はこう感じます。
「黒字なのに、なぜこんなに苦しいのか」
「これ以上どう頑張ればいいのか」
しかし原因は、努力や経営能力ではありません。
資金の性格と借入形態が、根本的にズレているのです。
■銀行がこの構造を最も嫌う理由
銀行が本当に恐れているのは、返済そのものではありません。
銀行が最も嫌うのは、「利益が出ない年に、一気に資金ショートする構造」です。
経常運転資金を証書貸付で持つ会社は、
- 利益が減った年
- 市況が悪化した年
- 想定外の支出が出た年
に、即座に資金繰りが悪化します。
銀行から見るとこれは、景気変動に極端に弱い会社に映ります。
■「返済のための経営」に陥る
この構造が続くと、経営の質も変わっていきます。
- 投資判断より返済優先
- 人材投資を控える
- 設備更新を先送りする
経営の目的が、「会社を良くすること」から「返済を続けること」へとすり替わっていきます。
銀行は、この状態を非常に嫌います。
なぜなら、企業の成長余地が、静かに失われていくからです。
■財務の弱い会社ほど抜け出しにくい構造
皮肉なことに、
- 財務が弱い会社ほど
- この構造に陥りやすく
- 抜け出しにくい
という現実があります。
*短期継続融資が出ない ➡ *証書貸付で運転資金 ➡ *返済で資金が減る ➡ *財務がさらに弱くなる
この負の循環が、資金繰り格差を生みます。
まとめ : 問題は「銀行」ではなく、「資金構造」にある
ここまで見てきたように、経常運転資金を返済前提の証書貸付で持つこと自体は、銀行にとって「危険」な判断ではありません。
むしろ銀行から見れば、
- 毎月返済があり
- 回収の道筋が明確で
より安全な貸し方です。
だからこそ、財務内容が弱い会社ほど、運転資金であっても証書貸付になるのです。
問題は、そこではありません。
経営者側から見たとき、
経常運転資金という、本来“返さなくてよい性格の資金”を返済前提の形で持ってしまうことで、
- 利益が出ても資金が残らない
- 売上が伸びるほど資金が苦しくなる
- 経営判断が常に守りに傾く
という構造が生まれてしまう点にあります。
これは、努力や能力の問題ではなく、資金の性格と調達方法のズレによって起きる現象です。
銀行は合理的に判断しているだけであり、苦しくなっているのは企業の資金構造です。
だからこそ経営者は、
「借りられたかどうか」ではなく、「どの形で借りているか」
に目を向ける必要があります。
資金繰りを左右するのは、借入の金額ではなく、借入の構造なのです。
