収益と利益の最大化を支援する
プロフィット・コーチの小林 剛です!
『結果』を出すなら、『(財務)知識』と『意識』で、PDCA
前回までの記事で、ABC分析の重要性と導入のステップを紹介しました。
多くの企業では、ABC分析を通じて「自社の稼ぎ頭(A)」と「足を引っ張る部分(C)」が明確になります。
ところが、ここで終わる会社と、ここから利益構造を劇的に変えていく会社に分かれます。
今回は、“ABC分析を通して見えてくる「利益の構造」”をテーマに、「利益を生み出す会社」に共通する3つの仕組みを整理します。
Aランクは“利益体質”を持っている

ABC分析を行うと、多くの会社で次のような現象が起きます。
- 売上の80%は上位20%の商品・顧客が生み出している
- しかし、利益の90%以上が、たった10〜15%の項目に集中している
つまり、「売上」と「利益」は一致していないのです。
◆Aランクの特徴◆
| 観点 | Aランクの特徴 |
| 顧客 | 値引きが少ない、継続取引が多い |
| 商品 | 高付加価値・高粗利益率 |
| 取引形態 | 受注から納品までのプロセスが安定 |
| 営業 | 提案営業・信頼関係型 |
| 経費構造 | 売上1円あたりの固定費負担が軽い |
Aランクの共通点は、「利益を生む構造が習慣化している」こと。
営業マンが意識しなくても、自然に利益が積み上がるビジネスモデルができているのです。
Bランクには“伸びしろ”が潜んでいる

Bランクは、一見“中途半端”に見えますが、実は会社の未来を支える成長ゾーンです。
ABC分析を継続して行うと、「B → Aへ成長していく顧客・商品」と「B → Cへ沈む顧客・商品」の二極化が起きます。
◆Bランクを育てる3つの視点◆
- 粗利益率を上げる
→ 値引き前提を見直し、「価格×価値」の関係を再設計する。 - 固定費負担を軽くする
→ 工数削減・外注化・標準化で利益構造を改善する。 - A顧客化のためのフォロー強化
→ 営業頻度・提案頻度・感謝頻度を高め、リピート率を上げる。
「Bを育てる=中期の利益基盤を育てる」ことです。
利益構造を強くしたい企業は、Aに依存しすぎず、Bの育成に力を注いでいます。
Cランクは“経営課題”を映す鏡である

Cランクの顧客・商品・在庫を分析すると、実は「経営の弱点」がそのまま映し出されています。
| Cランクの傾向 | 背景にある経営課題 |
| 利益率が低い | 値引き・原価管理不足 |
| 在庫回転が悪い | 需要予測・購買計画の欠如 |
| 取引が不安定 | 営業の属人化・契約依存 |
| クレームが多い | 品質管理・顧客対応の未整備 |
Cランクは、単に「切り捨てる対象」ではありません。
むしろ、「経営改善のヒント」が詰まっている領域です。
Cの中に眠る“構造的なムダ”を見抜き、仕組みから再設計することで、会社全体の利益率を底上げできます。
◆利益を生む会社の共通点◆

ABC分析を正しく経営に活かしている会社には、明確な共通点があります。
| 観点 | 利益を生む会社の特徴 |
| 数字文化 | 社員が「売上」ではなく「粗利益」で話す |
| 戦略 | Aに集中し、Cを減らす意思決定が早い |
| 管理 | 月次でABCを更新、変化を追う |
| 会議 | 「Aをどう守るか」「Bをどう育てるか」を議題にする |
| 経営者 | 数字を“判断のツール”として使う |
つまり、ABC分析を「一度やって終わり」にせず、“経営の定点観測”にしているのです。
これが、利益体質企業の最大の共通点です。
まとめ : 「利益の地図」を持つ経営へ
ABC分析は、単なるデータ整理ではありません。
それは、会社の利益構造を見える化する“地図”です。
- A:守るべき利益源泉
- B:育てるべき成長領域
- C:改善・撤退すべき課題領域
この地図を手にすれば、経営の判断が早くなり、迷いが減ります。
数字が“冷たい羅列”から“未来を描く言葉”へと変わる瞬間です。
あなたの会社では、A・B・Cの構成比を、最後に確認したのはいつですか?
利益を生む会社は、常に“今どこに力を入れるべきか”を数字で語っています。
次回は、
「ABC分析を活用した“粗利益最大化”の実践戦略」をテーマに、A・B・Cそれぞれに対して実行すべき具体施策を紹介します。
