
収益と利益の最大化を支援する
プロフィット・コーチの小林 剛です!
こんにちは。今日は、事業承継と相続の関係について、考えてみたいと思います。
事業承継や相続対策を考えるとき、多くの経営者が最初に相談するのが、税理士や弁護士、金融機関です。
彼らは専門家として、確かに有益なアドバイスをくれます。
しかし、よくあるのが「株価を下げましょう」という一点突破型の対策。
確かに、株価を引き下げることは、後継者が自社株を取得しやすくするための重要な手段です。
その代表的な方法のひとつが、「高額な役員退職金を支払って、会社の利益を圧縮し、結果的に株価を下げる」というもの。
しかし、ここに大きな落とし穴が潜んでいるのです。
株価が下がっても、相続税は上がる?

会社から多額の退職金を受け取ると、社長個人の現預金は増えます。
つまり、相続財産が増えることになります。
たとえば、事業承継のために株価を下げる目的で、退職金を2億円支給したとしましょう。
会社の株価評価は確かに下がるかもしれませんが、その2億円が個人の口座に入ることで、相続税の課税対象が大幅に増えることになるのです。
このように、事業承継の「法人側の対策」だけに偏ってしまうと、「個人側の相続リスク」を見落としてしまう。
これでは本末転倒です。
“部分最適”ではなく、“全体最適”の視点を!!

本来、事業承継と相続は切り離して考えるべきではない問題です。
- 会社側の視点(株価、資本構成、財務状況)
- 個人側の視点(退職金、相続財産、税負担)
- 家族や後継者の将来設計(経営、生活資金、相続人間のバランス)
これらを「一体的に俯瞰して対策を練ることが、本当の意味での“戦略”」です。
たとえば、退職金の金額を最適化し、贈与との併用を検討しながら、法人・個人のキャッシュバランスを考慮する。
こうした「トータル設計」が求められるのです。
なぜ“全体俯瞰”ができていないのか?

専門家が提供するのは「税務の最適解」であることが多く、彼らのアドバイスは、どうしても専門分野に偏りが出やすいのが現実です。
税理士は税金、弁護士は法律、金融機関は融資。
それぞれに長けてはいますが、「全体像をデザインする役割」は、実は誰も担っていない。
だからこそ、経営者自身が“全体を俯瞰する視点”を持つことが重要なのです。
◆経営者が今、持つべき視点とは?◆
- 株価だけを見ないこと。
→ 現金や資産の動きが個人側に与える影響まで意識する。
- 退職金は魔法の杖ではない。
→ 相続財産を増やし、結果として課税リスクを高める可能性あり。
- 分野を横断した専門家連携が必要。
→ 税務・法務・財務・ライフプランニングを統合的に設計するチームが求められる。
まとめ
事業承継と相続は、まさに「表と裏」の関係です。
どちらか一方の視点で対策をしてしまうと、もう一方で大きな問題が発生する―これは実際によくあることです。
経営者に求められるのは、“全体俯瞰”の目線と、最適バランスを図る判断力。
部分的な節税や小手先の手法ではなく、将来のビジョンを見据えた“戦略的設計”こそが、真の対策だと思えます。